ガランゴロン......
「あ、いらっしゃいませにゃあ♪」
淡い青と桃色の髪を持つ、猫耳の少女が明るい声で言う。
彼女の名は夢香。
ここ「Dream Taker」で武器を作り販売する店主だ。
「Dream Taker」は数千年続くとされる武器屋の老舗。
だが、そこの店主はずっと「夢香」なのである。
見た目も変わらず、猫耳を生やしたかわいらしい獣人の少女なのだ。
店に訪れたのは分厚い鎧を着こんだ騎士。
「今日は訓練用の剣を20本ほど欲しくてな」
彼はこの街の騎士団の団長。今回は新米の兵士が訓練に使う剣を調達するために来たらしい。
「は~い♪今お持ちするにゃ♪」
夢香は訓練用の武器が大量にしまってある倉庫から木製の剣をすぐに見つけ取り出す。
「これを20本で大丈夫かにゃ?」
「ああ、そいつで問題ない。ここの剣じゃないと簡単に折れちまって使い物にならねぇんだ、ハッハッハ!」
騎士団長は笑いながら、夢香が作った武器を絶賛した。
「わかったにゃ!今用意するにゃ~」
夢香は取り出した剣を、武器運搬用のケースへと収納していく。
「それにしても20本なんて、今年は入団希望が多かったのかにゃ?」
猫耳をぴょこぴょこさせながら騎士団長に問う。
「今年は入団希望が多くてな......これでも大半は落としたんだが、骨のあるやつが多くてな」
期待と不安が入り混じったような表情でそうつぶやく。
「最近はモンスター達も狂暴になってきたからにゃぁ......昔とは大違いにゃ」
夢香もため息交じりにそう話した。
そこで騎士団長は疑問に思った。
......彼女にとって「昔」とは?
自分が生まれたころからモンスターは狂暴だった。
それ故、大切な人を、街を守りたいと彼は騎士になり、やがて団長へとなったのだ。
「夢香ちゃん、気になったんだが......モンスターが狂暴になったのって、いつごろからなんだい?」
「500年くらい前からかにゃぁ?」
騎士団長は驚いた。
500年前から狂暴になったことが事実かは分からない。
ただ、彼女が「昔」ということは、少なからず経験している時代だということ。
そこでさらなる疑問がうかんできたので、思い切って聞いてみた。
「夢香ちゃんって......いったい何歳なんだい?」
「もう数えられないくらいかにゃぁ......少なくとも4000は超えてると思うにゃ」
もはや驚きを超えていた。
それほど長い間生きるのは、獣人であればあり得ない話でもない。
例えば竜神族等は数百から数千年生きる者もいる。
だが彼女は猫の獣人。生きても百数年と言われている。
なにより、どんなに長寿な種族でも、外見は老いてしまう。
彼女には、老いが感じられない。少女のままなのだ。
「にゃにゃ?わたしがなんでずっと少女の見た目なのか知りたいって顔してるにゃ♪」
「な、なぜそれを!?」
「何千年も生きてたら御見通しにゃ♪いいにゃ、団長さんには話してあげるにゃ♪」
「おお、ぜひとも聞かせてくれ!!」
「でもこのお話は、他言無用、そしてなにより、結構大変な話にゃ」
第2章 Coming Soon......